無題

いつも彼の後ろに隠れて私は泣いている



人前で涙するとすぐに助けてくれるようになって

ごく最近だけれど私は泣いているところを見られることが減った



けれども月に一度こうして彼は必ず消えてしまう


彼の居ない私はずっと独りで泣いているだけで

タイムリミットまでの数字を指折ることでしか未来を計れない


彼に話したらきっと出来ないもんは仕方ねぇって笑うけど


せめてもっと才能があったら目が覚めるほどの絵が描けるのにと思う


嫌なこととか恋とか過去とかそれらを引き受けているのは私で

今や彼にはそれ以外のほとんどがあるから


やっとバランスが取れた日常に安堵している

決して満ち足りてはいないけれど



三日くらいすれば元通りになるだろう

それまでは理由無く涙しては嗚咽を繰り返す


せめて睫毛だけでも私が機械だったら

流れ出る涙で錆びたそれで血を潤せるのに




月が満ちる夜は私たちの新月です