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クジラメン管理人のとっても私的なブログ、として始め現在では完全私物化、独立を達成した自由気ままなブログ
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もう帰らないかもしれない。そんな勢いで家を出たのに、財布を忘れたことに母からのメールで気付く。
携帯電話を見つめて嘆いてみたところでどうしようもない。
ただ言えるのは、少なからず動揺している僕が生きているのはこんな便利な時代。


衝撃的な破裂音で我にかえると目の前に、涙を浮かべた少女が立っていた。
それ、と震えた指先で示したのは不揃いのクレヨン。赤色だけが吐き気がしそうなほどに短く磨り減って、真っ二つに折られた黒色の片割れが、赤色と同じ列に窮屈そうに寝そべっている。

僕が誤って使ってしまったのだな、とすぐに気が付いた。しかし彼女の怒りの矛先は僕にはぼやけて見える。

ごめんなさい。
そう僕が呟くと、少女は踵を返して消えてしまった。謝ったから許してくれたのかな?言葉だけで?
だったら何も平手打ちしなくたっていいのに。
そう思ったけどそれは、横で一部始終を見ていた親友のきーちゃんにも黙っていた。


回転木馬が産み出す僅かな遠心力で酔った。しかし僕は笑っていなければならないのだとおそらく本能的に覚っていたので、なるべく楽しそうに見えるように努めた。
誰かがシャッターを切る音が聞こえる。
突然ちくちくと脳が疼いて、僕は思い出そうとする。何をだろう、僕は何を思い出そうとしているのか。
視界の片隅に仏頂面のきーちゃんが映って、辺りは全てセピア色になって止まる。


陽の光に唆されて僕がベッドの上で目を覚ますと、きーちゃんは僕の右手を握り締めて眠っていた。胸の辺りからまるであの娘のクレヨンみたいな赤色が拡がっていて、声を掛けようとする僕の喉が息を呑む。
ナースコールを押そうと手探りする僕の左手首をそれはもうこの世のものじゃないみたいに掴んで、
君が死なないなら死なないよって、言ったんだ。


僕は謝らなければならなかった

心から。
本当は分かっていた。


僕等のちょうど真ん中にあったはずの★が消滅してしまったのは、
君が揺らいだからじゃない。

僕が手を伸ばしてしまったからなんだ。


それをあの時は上手く言えなかった。
でもそういうことなんだ。だから分かってるなんて言ったの。
ごめんなさい。


余計な話だけれどその日以来僕は、花壇に咲く真っ赤な花を見ると吐き気がして、人知れずあなたの名前を呼ぶんです。
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