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クジラメン管理人のとっても私的なブログ、として始め現在では完全私物化、独立を達成した自由気ままなブログ
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彼女がここへ来たのは何度目だろうかと僕にそれを思い出す間も与えず、
あなたは誰?と彼女は言った。

いつもの事だから仕方ないと諦めて、僕は肩を竦めて彼女に着席を促す。


あの日の嘘を覚えています。

友達が私のお気に入りの鉛筆を失しちゃったあの日、
私はどうして泣いているのか聞かれるのが嫌で、わざと転んで膝を擦りむきました。

何も言わずに立っているだけで母は、転んじゃったのねって優しくしてくれた。
私はそれで充分でした。その一瞬だけ触れる温かい手で、満たされたつもりになっていたの。

彼女は毎回この話を繰り返しては、同じところで泣き出す。僕はその様子を黙って見ていた。
零れ落ちていく彼女の涙を見ているうちに、僕には必ず頭の片隅を過ぎる鮮明な彩りの記憶がある。

黄色い雨合羽を纏い、深いグリーンの大きな傘をさして、どんよりと灰色を携えた空を映し出した水溜まりで真っ青な長靴を泥だらけにして、幼い僕は泣いているのだ。

その場面に吸い込まれそうになるのをまた今日も耐えて、我にかえると彼女の話は随分と進んでしまっていた。
深刻そうな表情を作ってもぞもぞと座り直す僕に彼女は言う。

私は間違ってますか?


私はおかしいですか?


そういえば何時しか、僕には判らなくなっていた。
狂っているのは彼女なのか僕なのか。
本物は僕なのか彼女なのか。


発狂した瞬間のことは覚えていません。でも確かにあの時、まるで龍のような、天高く封印しようとする力がぼんやりと見えたんです。


封印しようとする、力が、見えた?龍のように?

先生、



僕は異常ですか?



あの頃からですよ、本当に、
私は私を叱ってくれる人になら体を許すようになってしまったの。馬鹿だね。

妙にゆっくりな口調でそう言って、彼女は笑った。
綺麗に濡れていた瞳はもう乾いていて、それは僕には無い不気味な光を宿した、太古に忘れ去られた宝石のようだった。
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